【御開帳と善光寺焼シリーズ|本編】
善光寺御開帳の年、
“本物”と出会った記録。
※このシリーズは順番に読むと、より伝わります。
▶︎はじめに|すべては一冊の本から始まった
▶ 第一話|出会いは、突然だった①
▶ 第二話|本物と出会う時間②(この記事)
▶ 第三話|余韻の中で見えたもの③
▶ 第四話|暮らしの中で使うということ④
▶ 第五話|帰路に繋がったもの⑤
▶ 善光寺焼とは何か|名前だけが残った焼き物
▶ 善光寺焼はどこから来たのか|出会いの流れを整理する
▶ シリーズ一覧を見る
※善光寺焼を探し始めた頃の話です。
最初は、よく分からなかった。
ただの古い器にしか見えなかった。
でも、
何度も手に取るうちに、
少しずつ違いが見えてきた。
ある日、
何気なく立ち寄ったリサイクルショップで、
ひとつの箱が目に入った。
木箱には、
「おふく盃」と書かれていた。
そして、その横にあった盃には、
「善光寺参拝記念」と描かれていた。
値段は、たしか800円。
はっきりとは覚えていないが、
その箱と一緒に並んでいた光景だけは、
なぜか強く印象に残っている。
御開帳の時期だったこともあり、
店の演出だったのか、
それとも自分の思い込みだったのかは分からない。
ただ――
その場で感じたものは、確かだった。

そのあとで、
手に取ったのが、あの盃だった。
手に取った瞬間、
違和感の正体が、少しだけ分かった気がした。
見た目じゃない。
もっと奥にあるものだった。
器には、
「善光寺参拝記念」と書かれていた。
鬼の面と、
おたふくの面。
いわゆる、
土産物として作られたものだと思う。
ただ――
その箱の中に入っていたものは、
それとは違っていた。
中に入っていた紙には、
「善光寺焼」と書かれていた。
そして、
青沼妙慧という名前。
祈りとして作られた焼き物。
善光寺に関わる、
本物の焼き物だった。
最初に目に入ったのは、
ただの土産物だったのかもしれない。
でも――
その奥にあったものは、
まったく別の世界だった。
鬼の面と、
おたふくの面。
表と裏のように、
ふたつの顔が向かい合っていた。

外に見える顔と、内にある顔。
気づけば、手に取っていた。
そして、
気づけば――
それを持って店を出ていた。
お金を払ったのかどうか、
今でもはっきり覚えていない。
ただ一つだけ、確かなことがある。
あのとき、
何かに引き寄せられるようにして、
この盃と出会ったということだけは、
はっきり覚えている。
善光寺焼の魅力は、すぐには分からない。


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