PR

御開帳と善光寺焼|帰路に繋がったもの⑤

第四話|暮らしの中で使うということ④

横文を出たあとも、
どこか気持ちは落ち着いていなかった。

あの空間で感じたものが、
まだ自分の中に残っていた。

そのまま、長野駅へ向かって歩き出す。

中央通り。

見慣れているはずの道なのに、
今日はどこか違って見えた。

歩いている途中、
ふと目に入ったものがあった。

「信濃の陶芸」

そう書かれた文字。

看板なのか、木札なのか、
はっきりとは分からない。

けれど、その言葉だけが、
なぜか強く引っかかった。

気づけば足を止め、
そのまま店の中へ入っていた。

そこには、会長が集めたという
コレクションが並んでいた。

静かに並べられた焼き物たち。

その中に、ひとつだけ
目に止まったものがあった。

——善光寺焼の器。

花瓶なのか、徳利なのか。

用途は分からない。
けれど、不思議と目を離せなかった。

本で見たものと、どこか似ている。

けれど、同じなのかどうかも分からない。

ただひとつ確かなのは、
「ここに在る」ということだった。

横文で見たもの。
本で知ったもの。
そして、今、目の前にあるもの。

すべてが、ひとつに繋がった気がした。

あの日は、
そこで終わったはずだった。

けれど実際には、
まだ終わっていなかった。

むしろ、ここで初めて、
一日の意味が形になったように思う。

御開帳という特別な日。

その中で出会ったものは、
ただの出来事ではなく、

ひとつひとつが繋がり、
今の自分に残っている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました