横文を出たあとも、
どこか気持ちは落ち着いていなかった。
あの空間で感じたものが、
まだ自分の中に残っていた。
そのまま、長野駅へ向かって歩き出す。
中央通り。
見慣れているはずの道なのに、
今日はどこか違って見えた。

歩いている途中、
ふと目に入ったものがあった。
「信濃の陶芸」
そう書かれた文字。
看板なのか、木札なのか、
はっきりとは分からない。
けれど、その言葉だけが、
なぜか強く引っかかった。

気づけば足を止め、
そのまま店の中へ入っていた。
そこには、会長が集めたという
コレクションが並んでいた。
静かに並べられた焼き物たち。
その中に、ひとつだけ
目に止まったものがあった。
——善光寺焼の器。
花瓶なのか、徳利なのか。
用途は分からない。
けれど、不思議と目を離せなかった。

本で見たものと、どこか似ている。
けれど、同じなのかどうかも分からない。
ただひとつ確かなのは、
「ここに在る」ということだった。
横文で見たもの。
本で知ったもの。
そして、今、目の前にあるもの。
すべてが、ひとつに繋がった気がした。
あの日は、
そこで終わったはずだった。
けれど実際には、
まだ終わっていなかった。
むしろ、ここで初めて、
一日の意味が形になったように思う。
御開帳という特別な日。
その中で出会ったものは、
ただの出来事ではなく、
ひとつひとつが繋がり、
今の自分に残っている。


コメント