PR

第二話|本物と出会う時間②

※善光寺焼を探していた頃の話です。

ある日、
何気なく立ち寄ったリサイクルショップで、
ひとつの箱が目に入った。

木箱には、
「おふく盃」と書かれていた。

そして、その場にあった盃には、
「善光寺参拝記念」と描かれていた。

値段は、たしか1000円。

はっきりとは覚えていないが、
その箱と一緒に並んでいた光景だけは、
なぜか強く印象に残っている。

御開帳の時期だったこともあり、
店の演出だったのか、
それとも自分の思い込みだったのかは分からない。

ただ――

その場で感じたものは、確かだった。

おふく盃と書かれた木箱と、同封されていた紙。

そのあとで、
手に取ったのが、あの盃だった。

器には、
「善光寺参拝記念」と書かれていた。

鬼の面と、
おたふくの面。

いわゆる、
土産物として作られたものだと思う。

ただ――

その箱の中に入っていたものは、
それとは違っていた。

中に入っていた紙には、
「善光寺焼」と書かれていた。

そして、
青沼妙慧という名前。

祈りとして作られた焼き物。
善光寺に関わる、本物の焼き物だった。

最初に目に入ったのは、
ただの土産物だったのかもしれない。

でも――

その奥にあったものは、
まったく別の世界だった。

鬼の面と、
おたふくの面。

表と裏のように、
ふたつの顔が向かい合っていた。

鬼とおたふく。
外に見える顔と、内にある顔。

気づけば、手に取っていた。

そして、
気づけば――

それを持って店を出ていた。

お金を払ったのかどうか、
今でもはっきり覚えていない。

ただ一つだけ、確かなことがある。

あのとき、
何かに引き寄せられるようにして、
この盃と出会ったということだけは、
はっきり覚えている。

第1話|そったく堂で見つけたもの
第3話|豊野で出会ったもの

コメント

タイトルとURLをコピーしました