【御開帳と善光寺焼シリーズ|本編】
善光寺御開帳の年、
“本物”と出会った記録。
▶ 第五話|帰路に繋がったもの⑤(この記事)
※善光寺焼を探していた頃の話です。
あの頃、
何を探していたのかは、
自分でもよく分かっていなかった。
善光寺焼をきっかけに、
いくつかの場所を巡り、
いくつかの人と出会った。
そったく堂。
豊野の店。
そして、
日々の暮らし。
振り返ると、
探していたのは、
器そのものではなかった気がする。
人とのやり取りや、
手に取った時の感触。
暮らしの中で使う時間。
そういうものの中に、
どこか懐かしさのようなものを感じていた。
うまく言葉にはできないが、
どこか、
自分の中に戻っていくような感覚だった。
気づけば、
手元にはいくつかの器が残っていた。

派手なものではない。
けれど、
どれも理由があって残ったものだった。
あの場所で出会ったもの。
あの人から受け取ったもの。
自分で選んだもの。
それらが、
今の暮らしの中に、静かに残っている。
遠回りしてきた自分が、
ようやく手に入れたものは、
特別な何かではなかったのかもしれない。
ただ、
暮らしの中に置けるものだった。
そして、
それを使い続けていくことが、
これからの時間になるのだと思う。
遠回りは、帰るための道だった。


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