生憎、
コロナウィルス感染が拡大し、
第7波を迎えていた頃。
長野県内だけじゃなく、
全国的に、
町の祭りが次々と消えていた。
須坂カッタカタまつりは中止。
翌日に予定されていた、
須坂みんなの花火大会も、
無観客で打ち上げ花火のみ。
ここ小布施町も、
例外では無かった。
3年連続で、
くりんこ祭りは中止。
代替開催予定だった
「小布施祇園フェス2022」も、
感染警戒レベル引き上げにより、
中止となった。
静かな町に、
広報の無線だけが流れてきた。
⸻
俺自身も楽しみにしていたけれど、
子供達には、
そんな説明は通じない。
「なんで?」
その無限ループ。
機嫌が悪くなるのも、
無理は無かった。
子供達の、
楽しみにしていた気持ちを、
どう受け止めればいいのか。
そればかり考えていた気がする。
⸻
「ママのお手伝いしたら、
買い物行こう」
そう話すと、
ようやく動き出す長男。
自分で着替え、
脱いだ服を洗濯場へ持って行き、
投げ付けてから、
また走って戻って来る。
散らかったオモチャを一緒に片付け、
妻の手伝いを始める兄妹。

変身ポーズ。
⸻
コロナで、
色々な我慢が増えていた頃。
遊び場も減った。
祭りも無くなった。
子供達には、
退屈な夏だったのかもしれない。
だからこそ、
何か少しでも、
楽しい時間を作ってやりたかった。
妻から、
「なんかオモチャでも買ってあげれば?」
そう言われて、
ドライブを兼ねて、
買い物へ出掛ける事にした。
幾つかの店を回り、
必要なものを買ってから、
道中で見つけた、
トイザらスへ立ち寄った。
⸻
「手伝ってくれたから、
ひとつだけ買ってやるよ?」
そう言うと長男は、
「祭りだ祭りだ祭りだー!」
と、
ドンブラザーの真似事をしている。
「おい、
周りに気をつけろ」
そう言っても、
「いーから、いーから!」
なんて笑っている。
……どこで覚えたんだか。
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兄は、
やっぱりドンブラザー。
姉は、
小さなアクセサリーセット。
妹には、
妻が選んだおしゃぶり。
気付けば、
カゴの中は、
オムツでいっぱいだった。
レジカウンター前にあった、
くじ引きに挑戦する兄妹。

⸻
帰り道。
「早く遊びたい!」
「早く帰ろうよ!!」
そう騒ぎながら帰宅すると、
近所の方から夏野菜を頂戴していた。
西陽の強い玄関前。
気を遣って、
日陰のあるウッドデッキへ、
丁寧に置かれていた。
まるで、
日本昔ばなしで聞いたような、
本当にあった現実の話。
「すいません」
ありがたく、
いただきます。
ごちそうさまです。
そんな言葉が、
自然と口から出ていた。
⸻
ウッドデッキに置かれていた
夏野菜を家の中へ運び、
みんなで片付けを済ませる。
気付けば、
昼間の暑さも、
少しだけ落ち着き始めていた。
愛犬を連れて、
家族みんなで近所を散歩する。
長男は、
リードを握って先を歩き、
妹は、
三輪車に乗って、
妻に押されながら、
ゆっくり進む。
祭りは無くなったけれど。
子供達は、
今日も全力で楽しんでいた。
たぶん、
大人だけが、
色々考え過ぎていたんだと思う。

⸻
少し歩いたあと。
今度は長男が、
「自分で!」
なんて言いながら、
リードを握って歩き出す。
愛犬と会話しているみたいに、
リードを離しては追いかけ、
捕まえて、
また座り込んで戯れている。
散歩と言っても、
普段なら15分くらいの道。
でもこの日は、
気付けば1時間以上、
時間が掛かっていた。
俺は、
その姿を少し後ろから見守る。
不思議な感覚だった。
ついこの前まで、
手を繋いで歩いていたのに。
今は、
愛犬と一緒に、
自分の世界を作りながら歩いている。
前へ進んでは止まり、
笑って、
座り込んで、
また走り出す。
祭りが無くなった夏だったけれど。
子供達は、
ちゃんと自分達の夏を作っていた。

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妻が気を利かせて、
花火を買ってくれていた。
早めに晩メシを済ませ、
食後に花火。
祭りは無くなったけれど。
家の前では、
ちゃんと夏が残っていた。
静かな夏の夜。
小さな手の中で、
今年も花火が灯る。

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このコロナ禍で、
色々な制約が増えた。
大人の事情も、
中止の理由も、
子供達にはまだ分からない。
それでも――
毎日、
全力で笑って、
全力で騒いで、
全力で今日を生きている。
その姿に、
救われていた。
⸻
でも。
他人と比べるより、
今日、
家族が笑っていた事。
それを大事にしたいと思った。
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祭りは無くなった。
でも――
あの日、
家の中では、
ちゃんと夏祭りみたいな時間が流れていた。
歩きながら、
少しずつ繋がっていった記録です。
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家族との時間、
子どもたちの成長を記録しています。
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