最近、皿減ったよな
毎日のように使っていると、
皿が一枚、二枚と減ったことには、すぐ気づく。
「あれ、この皿、前はもう少しあったよな。」
まあ、家で使っていれば、そんなこともある。
割れることもあれば、欠けることもある。

ちょうど皿も欲しかった。
そんな夏休みのある日。
穣と歩いている時に、
「帰り、皿でも見ていくか。」
そんな話をした。
すると穣が、
「お父さん、あそこの古いお皿見に行こうよ。」
「ああ、いいね。」
向かったのは、
小布施にある古陶磁コレクション 了庵。

我が家では何度も足を運んできた場所だ。
店内には古陶磁だけでなく、
ガラス戸の飾り棚に、
おもしろく不思議な作品が並んでいる。
石、木、身近なものが、
どういう発想を通ったらこうなるのか。
これが、なかなかぶっ飛んでいる。

古い器を見たり、
店主さんから話を聞いたり、
サイフォンのコーヒーを飲んだり。
その日も、
いつものように了庵へ向かった。
───

「大きくなったね。」
了庵が見えてくると、
穣は小走りで店の方へ向かっていった。
ガラガラッ。

「こんにちは。」
「おいおい。」
私はその後を追うように店へ入った。
しばらくすると、店主さんが出てきた。
「あら。」
穣を見るなり、
「大きくなったね。」
「また一段と大きくなったじゃない。」
「どうも、西野です。」
挨拶をして、
いつものコーヒーをお願いする。

サイフォンでコーヒーを淹れてもらっている間、
店主さんと話をしていると、
「あの時のお皿ね。欠けてるかもしれないけど、もう一枚出てきたのよ。」
春に買った皿だ。

「いいんですか。」
こんな話をしていると、
店の奥から穣の声がした。
「お父さん、これ。」
行ってみる。
───
「これ、かっこいい。」
穣が手に取ろうと背伸びしていたのは、
古い小皿。

「お父さん。これ、かっこいい。」
「なんで? どこがいいの?」
「夕方の雲の絵の中に波が描かれててさ、かっこいいんだよな。」
「へえ。そこまで見てんだ。」
「これにさ、おはぎ乗せたら、かっこいいよね。」
「……おはぎ?」
「ヨモギ餅の団子だっていいんだしさ〜。」
「急に和菓子屋になったな。」
すると穣は、
何を当たり前のことを聞いてるんだという顔で、
「俺、あんこ大好きだからさ!」
……。
皿の話じゃなかったんかい(笑)。
私も器を見ると、
何を盛ろうか、あれこれ考える。
とはいっても、
大した料理ができるわけじゃない。
調理師の資格があるわけでもない。
最近なんて、
自分が何を作るかより、
妻が何を作って、何を盛ってくれるんだろう。
そんな期待をする時間も増えた。
───
この日は、
本も何冊かいただいた。
その中にあったのが、
『しなのの陶磁器』。
私が教科書にしていた本だ。
店主さんは穣に、
「お父さんに読んで教えてもらってね。」

「いいんですか。」
「ありがとうございます。」
家へ持ち帰ってから開いてみると、
あちこちに線が引いてある。
何度も開いた跡も残っている。
すっげえ勉強してんな。
この本を開きながら、
どれだけの器を見てきたんだろう。
そんなことを思った。

江戸。明治。大正。
簡単に口にするけれど、
明治でさえ、もう百年以上前。
了庵には、そんな時代の器が普通に並んでいる。
それが今も残って、
また誰かの手に渡っていく。
私は、そういうのが好きだ。
そうそう。
本だけじゃなく、
なぜかスペイン茄子もいただいた。
「ありがとうございます。」

その謎も一緒に持ち帰った。
そして、
食べてしまった。
結局、
謎は深まるばかり。
───
了庵を出る頃には、
皿に本に、荷物がどっさり。
重い。
さすがにこれはきつい。
妻に電話すると、
これから保育園へ迎えに行くという。
「悪い、先に俺たち拾って。」
妻へ応援要請。

───
ギヤマン横丁(観音通り)を歩き、
陣屋道と交差する六川南の信号を右折。
そのまま歩いて、
薬師通りが陣屋道に突き当たる、
小布施中学校のグラウンド脇まで来た。
みちしるべを見ると、
北斎館、フローラルガーデン、
おぶせミュージアム・中島千波館。
いつも見ている小布施の場所が、
道でつながっている。
まあ、この時の俺たちに、
そんな余裕はなかったけど(笑)。
そして、
ここで二人とも尽き果てた。

ここまで来て、
二人とも電池切れ。
穣はその場に座り込み、
私も隣で動く気なし(笑)。
あとはもう、
妻が来るのを待つだけ。
そこへ妻が到着。
救助された。

そのまま保育園へ向かい、
姉妹を迎えて家族で家へ帰った。
帰るなり、
子どもたちとシャワーを浴びる。
───
風呂上がり。
食卓には、
もう冷やし中華が並んでいた。
「うわ、もう使ったんだ。」
いいね。
浅さもちょうどいい。
こういう色のある皿、
うちにはあまりなかったから、
冷やし中華がよく似合う。

食べながら妻に聞いた。
「そういやさ、皿減ってたけど、あれ何?」
「ああ、穣だよ。」
三時のおやつを取ろうとして、
上の方に手を伸ばした時に、
皿をひっくり返してしまったらしい。
「ああ、そういうこと。」
まあ、
怪我なくてよかった。
朝にはなかった器が、
夜にはもう、普通にうちの食卓にいる。
小さいようで、大きな器。
大きいようで、小さな器。
風呂上がりの食卓には、
そんなこととは関係なく、
さっき我が家に来たばかりの器が、
まるで昔からうちにいたように、
当たり前に、我が家に溶け込んでいた。
───
了庵から徒歩で行ける周辺スポット
※徒歩時間・距離は実際に歩いて計測した目安です。
| スポット | 徒歩時間 | 距離 |
|---|---|---|
| おぶせミュージアム・中島千波館 | 1〜4分 | 約100m |
| 小布施町歴史民俗資料館 | 4〜7分 | 約300m |
| 松葉屋本店・えんとつ | 5〜8分 | 約350m |
| cafe & marche ichinii | 6〜9分 | 約450m |
| 小布施堂本店 | 7〜10分 | 約550m |
| 桝一市村酒造場 | 8〜11分 | 約550m |
| 高井鴻山記念館 | 8〜11分 | 約600m |
| 北斎館 | 8〜10分 | 約600m |
| 皇大神社 | 9〜12分 | 約600m |
| 日本のあかり博物館 | 9〜12分 | 約650m |
| 小布施駅 | 11〜14分 | 約800m |
| フローラルガーデンおぶせ | 12〜15分 | 約900m |
| 北斎ホール | 13〜16分 | 約900m |
| 雁田水穂神社 | 14〜17分 | 約1.0km |
| 雁田のヒイラギ | 15〜18分 | 約1.1km |
| 浄光寺 | 18〜21分 | 約1.3km |
| 岩松院 & KUTEN fruit&cake | 19〜22分 | 約1.3km |
| おぶせ温泉穴観音の湯 | 26〜29分 | 約1.7km |
| 玄照寺 | 27〜30分 | 約1.8km |
各スポットの公式情報はこちら
▶︎ 栗菓子の小布施堂
▶︎ 桝一市村酒造場
▶ 高井鴻山記念館
▶ 北斎館
▶︎ 皇大神社
▶ あかり博物館
▶ 小布施駅 時刻表
▶︎ 北斎ホール
▶︎ 真言宗豊山派 浄光寺
▶︎ 陽光山 玄照寺
店舗・美術館情報
古陶磁コレクション 了庵
住所:長野県上高井郡小布施町小布施88-3
電話:026-247-5866
営業時間:10:00〜17:00
※営業時間・休館日・入館料などは、訪問前に最新情報をご確認ください。
あわせて読みたい
了庵に通うようになって、
地元の焼き物にも興味を持つようになった。
それも、この場所から始まったことの一つ。
▶︎ 善光寺焼を訪ねた記事
ここまで読んでいただき、
ありがとうございました。
もしこの記事が、
「行ってみたい。」
「この器、ちょっと見てみたい。」
そんなきっかけになれば、
とてもうれしく思います。
これからも、
歩いて出会った景色や人、
そして、その場所で過ごした時間を
記録として残していきます。


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