さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。
7月25日、小布施の夏でございます。
祭りは夕方からだってぇのに、
朝っぱらから浮かれている奴がいる。
誰だ。
穣だ。
シャボン玉なんぞ吹いちゃって、
気分はもう祭りの真っ最中。
ところが背中を見りゃあ――
皮がむけている。

おいおい。
祭りが始まる前から、
ひと皮むけてどうする。
原因は分かっている。
連日の須坂サマーランド。
夏を遊び倒した結果が、
背中に出ている。
母ちゃんが仕事へ出かけるころ、
姉妹はというと――
寝ている。
夜更かしのしすぎで、
まだ寝床。
朝から元気なのは、
穣ひとり。
シャボン玉を吹く。
背中はむける。
祭りはまだ始まってない。
なのに、
もう夏が騒がしい。
───
まだ時間はある――そのはずだった
子どもみこしの集合は午後4時。
まだ時間はある。
庭の畑を見る。
収穫する。
子どもたちも手伝う。
庭で遊ぶ。

祭りは夕方。
まだまだ大丈夫。
のんびり。
のんびり。
───
していたら、
時間がない。
四時集合。
松村の公会堂。
朝からあれだけ祭り祭りと浮かれていた一家が、
肝心の祭りに遅れそうになっている。
「穣、行くぞ!」
父と穣、
走る。
織と藍は、
仕事から戻った母ちゃんと車で追いかける。
さあさあ、
祭りが始まる前から、
西野家だけ妙に忙しくなってまいりました。
それでも――
なんとか間に合った。
───
去年できなかった子どもみこし
公会堂に着けば、
穣は法被をもらう。
去年、
小学一年生だった穣。
本当なら、
去年も子どもみこしに出るはずだった。
ところが2025年のくりんこ祭りは、
あいにくの雷雨。
祭りそのものは行われたが、
子どもみこしは中止になった。
あの日、
引けなかった綱。
今年は引ける。
───
とはいえ。
穣、
実は初心者ではない。
保育園の年長のころ、
勝手に参加して、
ちゃっかり法被まで着ている。
しかも写真を見返せば、
なぜか私の弟まで、ちゃっかり参加している。

祭りとなれば、
遠慮という言葉を知らない。
今年も勝手知ったるなんとやら。
自分の法被をもらったと思ったら、
妹の分まで持ってくる。

穣!
織!
藍!
西野家三人衆、法被装着。
さあさあ、
いよいよ出陣でございます。
───
凍ったアクエリアス、そして「わっしょい!」
公会堂では、
熱中症対策に凍ったアクエリアスをいただいた。
ありがたい。
実にありがたい。

法被を着る。
綱を握る。
そして声を出す。
「わっしょい!」
「わっしょい!」
神輿は肩には乗らない。
台車に乗っている。
子どもたちは、
それを引く。
いいじゃないか。
引け引け。
去年引けなかった分まで、
引いとくれ。
大日通りをまっすぐ。
国道403号を横切る。
一つ目を右へ。
目指すは皇大神社前。
「わっしょい!」
声が出る。
足も出る。
法被も似合ってる。
去年は雨。
今年はちゃんと、
町を進んでいる。
父ちゃんとしては、
ちょいと嬉しい。
───
なんて浸っている間にも、
子どもは先へ行く。
待て待て。
父も行くぞ。
───
皇大神社に着いた途端、全員自由
無事、
皇大神社前まで到着。
子どもみこし、
終了。
皇大神社|ここから歩ける小布施
今回、子どもみこしの到着地点となった皇大神社。
小布施駅からも近く、
毎年1月には「安市」が開かれ、
だるま市や火渡神事などで賑わう神社です。
祭神は天照皇大神。
所在地
長野県上高井郡小布施町大字小布施1136
小布施駅から
徒歩 4〜7分・290m(実測)
皇大神社から歩ける主な場所
【← 今ある13か所の実測表をそのまま置く →】
※徒歩時間・距離は「みちしるべ」で実際に歩いて確認した実測値です。
| cafe & marche ichinii | 3〜6分 | 約250m |
| 小布施駅 | 4〜7分 | 約290m |
| 小布施堂本店 | 5〜8分 | 約300m |
| 桝一市村酒造場 | 5〜8分/6〜9分 | 約350m |
| 北斎ホール | 5〜8分 | 約350m |
| 高井鴻山記念館 | 6〜9分 | 約350m |
| 日本のあかり博物館 | 6〜9分 | 約400m |
| おぶせミュージアム・中島千波館 | 6〜9分 | 約450m |
| 松葉屋本店・えんとつ | 6〜9分 | 約450m |
| 北斎館 | 8〜11分 | 約500m |
| 古陶磁コレクション 了庵 | 9〜12分 | 約600m |
| 小布施町歴史民俗資料館 | 13〜16分 | 約900m |
| 玄照寺 | 19〜22分 | 約1.4km |
| フローラルガーデンおぶせ | 20〜23分 | 約1.4km |
| 雁田水穂神社 | 22〜25分 | 約1.6km |
| 雁田のヒイラギ | 23〜26分 | 約1.6km |
| 浄光寺 | 26〜29分 | 約1.8km |
| 岩松院 & KUTEN fruit&cake | 27〜30分/28〜31分 | 約2.0km |
| おぶせ温泉穴観音の湯 | 30〜33分 | 約2.0km |
※徒歩時間・距離
みちしるべで実際に歩いた立ち寄り先
皇大神社から少し足を延ばせば、
これまで「みちしるべ」で歩いて紹介してきた場所にも立ち寄れます。
・cafe & marche ichinii…|徒歩3〜6分・250m
・おぶせミュージアム・中島千波館|徒歩6〜9分・450m
・古陶磁コレクション 了庵|徒歩9〜12分・600m
あわせて歩きたい小布施の主要スポット
・高井鴻山記念館|徒歩6〜9分・350m
・日本のあかり博物館|徒歩6〜9分・400m
・北斎館|徒歩8〜11分・500m
さあ、
ここから家族そろって祭りを楽しもう。
───
と思ったら、
散った。
穣。
どこ行った。
皇大神社の中の、
小さな川みたいな水路。
そこで何をしている。
陶磁器の破片を拾っている。

祭りに来て、
陶片探し。
相変わらずである。
織はというと、
この日のために初めて買ってあげた着物。
友達と一緒に記念撮影。

こちらはちゃんと祭りらしい。
藍は公園。
友達と遊んでいる。
そして父。
会社の人と会った。
境内のテーブルで、
酒を飲む。
穣は陶片。
織は着物。
藍は公園。
父は酒。
全員、自由。
さっきまでの、
「わっしょい!」
という団結は、
いったいどこへ行った。
───
町じゅう祭りでございます
子どもみこしが終われば、
今度は町の祭り。
本部近くでは太鼓。
特設ステージでは弾季舞。
人も増える。
声も増える。
祭りの空気が、
一気に濃くなっていく。
私には、
ひそかな目当てもある。
北斎館で見る、
あの立派な、祭り屋台。
今年は出るか。
探す。
……いない。
もう一度見る。
……やっぱりいない。
今年も留守番かい。
いつ出るんだろうな。
出ればいいのにな。
父の密かな願いは、
また来年へ。
───
見るだけのはずが、なぜか参加
祭りをひと回り。
今日は見て楽しむ。
そんなつもりだった。
───

一時間もしないうちに、
参加していた。
どうしてこうなった。
地区の皆さんに混ぜてもらい、
さらにビールまでいただく。
「飲み干しちゃってください!」
はい?
そんなこと言われたら、
飲むしかない。
いただきます。
穣は、
地区の山車を引っ張る。
さっき子どもみこしを引いていた兄妹が、
今度は地区の山車を引いている。

父はその横。
声を張る。
「そうれ! そうれ! そうれ! そうれ!」
「一、二、三、四!」
「チョチョンがチョン!」
くりんこ音頭。
穣は引く。
父は叫ぶ。
そして飲む。
また叫ぶ。
また飲む。
見る側だったはずの親子が、
気がつけば、
すっかり祭りの中にいる。

───
右を見りゃ友達、左を見りゃ先生
山車は、
物語ボックスのある小学校前から、
小布施駅へ向かって、
町をぐるりと周回する。
向こうから、
別の連がやって来る。
「あっ!」
織が手を振る。
友達だ。
今度は藍も手を振る。
先生もいる。
知り合いもいる。
右を見りゃ友達。
左を見りゃ先生。
向こうの地区にも、
知った顔。

小布施、狭い。
いや、
子どもたちのおかげで、
知り合いが増えたのだ。
本当に、ありがたい。
保育園に学校。
友達に先生。
子どもたちが町で育つほど、
親の私にも、
声をかけてくれる人が増えていく。
町を歩けば、
誰かに会う。
手を振る。
声をかける。
向こうも振る。
子どもたちは、
いつの間にやら祭りの輪の中。
先程まで庭で遊んでいた子どもが、
今は町のど真ん中で、
祭りの一員になっている。
こういうのが、いい。
───
祭りは終わる。父は終わらない
祭りも終盤。
そろそろ帰る時間。
普通なら、
帰る。
ところが、
帰らない。

知り合いを見つければ、
「今度、遊びに来いよ!」
また一人。
また一人。
子どもも帰らない。
父も帰らない。

そして父は、
飲む。
飲む。
飲む。
気がつけば――
ベロベロである。
妻は呆れていたかもしれない。
いや。
たぶん、
呆れていた。
───
あわて男ならぬ、酔っぱらい男
ようやく帰る。
妻の車は、
松村高海道前の町営駐車場。
そこまで歩く。
昼間、
子どもみこしで進んだ道を、
今度は戻る。

行きは元気。
帰りは、
ぐったり。
妻と藍は、
どんどん先へ行く。
残ったのは、
穣。
織。
父。
三人とも、
くたくた。
いや。
父だけは、
くたくたに加えて、
ベロベロ。
歩く。
休む。
歩く。
腰掛けがあれば、
横になる。
また歩く。
そしてたどり着いたのが、
「あわて男の善光寺参り」の
物語ボックスがある東屋。休憩。
あわて男どころじゃない。
こっちは、
酔っぱらい男の帰宅参りである。
昼間は、
「わっしょい!」
夜は、
東屋でぐったり。
行きは子どもみこし。
帰りは酔っぱらい神輿。
ただし、
誰も担いじゃくれない。
───
今年は、引けた
去年は、
雨でできなかった。
今年は、
三兄妹そろって法被を着た。
綱を引いた。
「わっしょい!」
と声を出した。
穣は地区の山車も引いた。
織は初めての着物で祭りを歩いた。
藍は友達と走り回った。
父は――
まあ、
飲みすぎた。
でも、
それも含めて、
小布施の夏。
子どもたちは、
こうして少しずつ町の中へ入っていく。
知っている顔が増えて、
声をかける人が増えて、
祭りが、
ただ「見に行くもの」じゃなくなっていく。
いつか、
「お父さん、一緒に行こう」
なんて言わなくなる日も来るだろう。
だから今は、
一緒に歩いて、
一緒に笑って、
一緒に「わっしょい!」と声を出せる夏を、
楽しんでおけばいい。
───
なんて父親が、
ちょいと格好つけたところで。
帰り道では、
東屋で伸びている。
おいおい。
祭りが始まる前から、
ひと皮むけていたのは穣。
祭りが終わって、
ひと皮むけるべきなのは父のほうだった。
さあさあ、
今年も小布施の夏でございました。
わっしょい。
そうれ、そうれ。
1・2・3・4、チョチョンがチョン!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
こうした何気ない一日を、
これからも記録として残していきます。
もし気に入っていただけたら、
👣足あとを残していただけると励みになります。
歩きながら、
少しずつ繋がっていった記録です。
▶ 七夕の食卓


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