〜振替休日、息子と根曲がり竹を探しに〜
運動会が終わった。
日曜日を挟んで振替休日。
月曜日。
朝は少しゆっくりだった。
息子が起きてきたのも9時頃。
運動会のあと、
ばあちゃんと食事を済ませた帰りだった。

立ち寄ったコンビニの明かりの下で、
今年初のクワガタを見つけてしまった。

翌日の夜は、
息子と二人でクワガタ探し。
小さなクワガタを三匹見つけた。
息子は大喜びだった。

そんな訳で少し寝不足だった。
仲間からも、
「根曲がり竹行かないか。」
と誘われていた。
根曲がり竹が解禁になったばかり。
しかも振替休日。
息子も休み。
行かない理由が見つからなかった。
二人で行ってみることにした。
9時半頃、
妻は仕事へ。
娘たちを保育園へ送り届けてから出勤。
俺は長男と二人で志賀高原方面へ向かった。

山田牧場近くのパトロールテントへ着く。
車を停めると、
テントで待機していた男性二人が近寄ってくる。
助手席側から声を掛けてきた。
「一人千円です。」
すると息子が真似る。
「一人千円で〜す。」
「昨日運動会だったんだよ〜。」
俺はまだ財布も出していない。
「赤組が勝ったんだよ。」
「ああ、そうか。」
「諦めないで協力した。」
男性二人が笑う。
「それで今日は学校休みか?」
「うん。」
「振替休日なんです。」
と俺が答える。
「そうか、そうか。」
「じゃあ今日はいいや。」
そんな流れで、
息子の分はサービスになった。
ありがたい。
ただ結果として、
千円浮いた。
山へ入る。
根曲がり竹探し開始。

竹やぶの中へ入る。
最初はどこに生えているのか全く分からない。
落ち葉。
笹。
枯れた竹。
どれも同じように見える。
長男は首をかしげていた。
「良く見ると見つかるぞ。」
「うん。わかった。」

息子のペースで歩く。
途中、
あちこちでガサガサと音がする。
「熊かな?」
「人かもしれないし、熊かもしれない。」
そんな話をしながら歩いていると、
気付けば二時間。
車に戻って、
息子が数えてみた。
111本。

たぶん食べる量より多い。
けれど、
このくらいが丁度いい。
根曲がり竹採りを終えたあと、
息子と七味温泉山王荘へ立ち寄った。

今は、日帰り入浴のみ。
山あいにひっそりと建つ昔は宿。
派手さはない。
けれど、この日の疲れを流すには十分すぎるほどだった。
温泉卵を作るため、
セブンイレブンで買った卵を源泉へ沈める。
ほとんど客はいない。
後から来た客も数人だけ。
息子と二人、
ゆっくり湯に浸かった。
山を歩き回った足も、
竹やぶをかき分けた腕も、
気付けばすっかり軽くなっていた。
息子は何度か来ていることもあって、
慣れた手つきで卵をかごへ入れていた。
すっかり温泉卵作りに夢中だった。
七味温泉山王荘では、
温泉の湯を使って卵を茹でることができる。
「まだかな。」
「もう出来たかな。」
そんなことを言いながら、
何度ものぞき込んでいた。
山で遊び、
温泉で温まり、
温泉卵を待つ。
なんとも贅沢な時間だった。

風呂上がりに卵を回収する。
そのまま車を走らせる。
ふと横を見る。
もう寝ている。
熟睡。
爆睡。
いびき付き。
小学二年生には十分な冒険だったのだろう。
今夜のたけのこ汁用に、
ツルヤへ寄った。
目当てはサバ缶だ。
駐車場へ着いた頃、
ようやく息子が目を覚ました。
「サバ缶買いに行くぞ。」
「うん……。」
返事はする。
歩いてもいる。
けれど、
まだ寝ている。
その姿がおかしくて、
思わず笑ってしまった。
サバ缶を買い終わる頃、
息子が言った。
「腹減った。」
それじゃあ行くか。
帰り道、
テンホウへ寄った。
注文したのはテンホウメン。
山を歩いた後の身体には、
こういう一杯がたまらなくうまい。
息子も夢中で寝ぼけながら食べている。

家へ帰る。
荷物を降ろす。
すると息子が言った。
「少し寝ていい?」
「いいぞ。」
そう言うと、
息子はそのまま二階へ上がっていった。
俺は今度は病院へ向かう。
リハビリだ。
けれど振り返ってみれば、
今日一日そのものがリハビリだった気がする。
良い一日だった。
リハビリを終えて帰宅する。
さて、
ここからもうひと仕事。
111本の根曲がり竹が待っている。
皮を剥く。
剥く。
まだ剥く。
終わらない。

気付けば時計は4時半。
みんなが帰ってくるまでに終わらせる予定だった。
見事に失敗した。
すると娘たちがやって来る。
「やるー。」
「これ剥けばいいの?」
そして妻も参戦。
結局、
家族総出の根曲がり竹作業になった。

なんとか下ごしらえを終える。
娘たちは妻と風呂へ向かう。
その間に、
俺は台所の段取りを進める。
風呂から上がった妻と交代する。
ちょうど料理が出来上がった頃。
二階から足音が聞こえた。
息子だ。
まだ少し眠そうな顔で降りてくる。
「あっ!!」と勝手にあとは無言。

ようやく出来た夕飯のおかず。
根曲がり竹の天ぷら。
根曲がり竹入りの卵焼き。
サバ缶入りのたけのこ汁。
そして温泉卵。
山へ行って、
採ってきた根曲がり竹が家族の晩飯になる。
息子は山を歩いた。
娘たちは皮剥きを手伝った。
妻は料理を仕上げた。

山で遊び、
温泉で温まり、
温泉卵を待つ。
そして家に帰って、
みんなで皮をむき、
みんなで食べる。
なんとも贅沢な時間だった。
誰か一人じゃ出来なかった晩飯だった。
特別な旅行じゃない。
高い遊びでもない。
けれど、
こういう一日が案外忘れない。
良い一日だった。
ありがとう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
こうした何気ない一日を、
これからも記録として残していきます。
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歩きながら、
少しずつ繋がっていった記録です。


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