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なんでもない夕方

学校帰りに死んだ鳩を見つけて持ち帰った長男 生き直し

なんでもない夕方

今日は痛みに耐えられなくなり、

二時間早く仕事を上がった。

病院へ寄り、

診察を受け、

家へ帰る途中だった。

前の方にランドセルが見えた。

赤いシャツを着た長男だった。

俺のシャツを着ていた。

学校帰りらしい。

何か袋を持っている。

気になって車を寄せた。

そして後ろから声を掛けた。

「おい。」

息子が飛び上がった。

「うわっ!」

「びっくりした!」

「びっくりしたのは俺のほうだ!」

ふと袋を見る。

「なんだそれ?」

そう聞くと、

息子は少し得意そうな顔をした。

「ヤバくね?」

「鳩死んでたから捕まえた。」

死んだ鳩を持って歩く学校帰りの長男
ランドセルと鳩。

袋を見る。

本当に鳩が入っていた。

「どこで捕まえたんだ?」

「あそこで、こーやって倒れてた!」

「ナイス!今夜は焼き鳥だな?」

「そうだよ。鳩死んでたからさー捕まえた!」

近くの畑へ行き、

二人で穴を掘った。

「ちゃんと埋めてやればいい。」

息子は黙ってうなずいた。

死んだ鳩を埋める長男
ランドセルは最後まで下ろさなかった。

土をかけ、

息子と一緒に手を合わせた。

埋め終わると、

息子が言った。

「車乗せて。」

「ダメだ。」

「先に帰って手を洗え。」

そう言うと、

息子は走って帰っていった。

ランドセルが揺れていた。

家へ戻る。

気が付けば、

隣に息子が座っていた。

スーパーへ寄った。

店の中を歩いていると、

息子が言った。

「サメ食べたい。」

「またか。」

「うん。」

カゴへ入れた。

今夜はサメの唐揚げだ。

家へ帰る。

玄関の前で、

次女が待っていた。

何かを両手で持っている。

「お父さん。」

「プレゼント。」

差し出されたのは花束だった。

花屋の花ではない。

道端の草だった。

シロツメクサの花束を差し出す次女
道端の宝物。

「これ何ていう花?」

そう聞くと、

次女は胸を張った。

「しろくま草。」

すると横から長女が言う。

「違うよ。」

「シロツメクサ。」

次女は少し不満そうな顔をした。

それでも花束は受け取った。

シロツメクサの花束を差し出す姉妹
「はい、どうぞ。」

妻が台所でサメの唐揚げを作っている間、

息子と一緒に風呂へ入った。

湯船に浸かりながら、

長男が三歳くらいの頃、

ズボンのポケットから大量のダンゴムシが出てきた話になった。

その流れで、

「いつカブトムシ捕まえに行く?」

と聞かれた。

晩飯には、

妻が作ってくれたサメの唐揚げが並んだ。

埋葬を終えた夜、夕飯を囲む子どもたち
そして、いつもの夕飯が始まった。

息子は嬉しそうに食べていた。

そこで、

学校帰りに鳩を持っていた話を妻にした。

「ヤバくね? 鳩死んでたから捕まえた」

と言っていたこと。

畑に埋めてきたこと。

話を聞いた妻は笑っていた。

妹たちが摘んだシロツメクサの花束
妹たちが摘んできた花は、しばらく台所に飾られた。

息子は唐揚げを食べながら、

やっぱり少し得意そうだった。

痛みは相変わらずだった。

仕事も最後まではできなかった。

サメの唐揚げが並ぶ夕飯の食卓
その日の夕飯は、サメの唐揚げだった。

それでも、

鳩を埋めて、

サメを買って、

シロツメクサをもらった。

なんでもない夕方だった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

こうした何気ない一日を、
これからも記録として残していきます。

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歩きながら、
少しずつ繋がっていった記録です。

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