見渡す限り、山々。
空気もうまい。
水もうまい。
景色もいい。
言いたいことも、
山々あると思うんだけど。
たまに“言葉”だけは、
飲み込みづらい時がある。
……ただ、
それをそのまま口にできない場所で、
もうひとつ気をつけなければいけない話がある。
選挙の時期になると。
⸻
街にいた頃、
選挙の話なんて、
ほとんどしなかった。
誰に入れるかも自由。
入れるかどうかすら自由。
話題に出すこと自体、
少なかった。
でも、
ここでは違う。
「今回、誰に入れる?」
それが、
普通に飛んでくる。
軽い会話みたいでいて、
軽く返していい話ではない。
名前を出せば、
それはそのまま“立場”になる。
曖昧に返せば、
“はっきりしない人”になる。
黙れば、
“何を考えてるか分からない人”になる。
⸻
誰に入れるかは、
自由のはずだ。
でも実際は、
自由なままではいられない空気がある。
「あの人に入れておいてくれ」
そんな言葉も、
冗談みたいに流れてくる。
別に、
誰かに怒鳴られる訳じゃない。
でも、
逆らいにくい空気だけは、
ちゃんとある。
⸻
昔、
候補者本人が、
普通にインターホンを押して来た時は驚いた。
街にいた頃は、
そんな距離感を見たことが無かったからだ。
⸻
断ること自体が、
ひとつの意思表示になる。
乗ることも、
また同じだ。
どちらにしても、
何かしらの“色”がつく。
⸻
街では、
すれ違うだけの関係がほとんどだった。
だから、
意見が違っても、
関係は変わらない。
でもここでは、
人と人の距離が近い。
だからこそ、
小さな違いが、
そのまま関係に影響する。
それが良いとか悪いとか、
そういう話ではない。
ただ、
そういう場所だというだけだ。
⸻
それでも、
最後に決めるのは自分だ。
誰に入れるかも。
どう関わるかも。
空気に従うのか。
空気を読むのか。
それとも、
距離を取るのか。
正解なんて、
たぶん無い。
これは、
あの時の選挙の話じゃない。
どこの誰の話でもない。
ただ、
こういう場所で生きている人間が、
何を感じ、
どう選ぶかという話だ。
⸻
たぶん、
田舎で一番強いのは、
政策でも、
名前でもない。
“空気を壊さない人”
なんだと思う。
……いや、
だから空気がうまいのかもしれない。
なお、本記事は特定の個人や団体を指すものではありません。
また、家族や関係者を含め、誰かを攻撃したり誹謗中傷する目的で書いたものでもありません。
人それぞれに事情や立場があり、見えない部分もあります。
誰かを傷つけるためではなく、自分自身の経験や感じたことを記録として残しています。
歩きながら、
少しずつ繋がっていった記録です。
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