家へ帰ると、
犬は寝ていた。
怒っていたのかも知らない。
正しかったのかも知らない。
間違っていたのかも知れない。
明日の心配もしない。
現状の心配もしない。
昨日の後悔もしない。
ただ気持ちよさそうに寝ている。
もしかすると、
一番空気がきれいなのは、
こういう生き方なのかもしれない。
⸻
空気清浄機みたいな人がいる。
会社にもいる。
学校にもいる。
友人の中にもいる。
昔は、
優しい人のことだと思っていた。
でも、
生きていると違うことに気付く。
空気清浄機みたいな人には、
何種類かいるらしい。
空気を見る人。
この人はすごい。
事務所へ入った瞬間に分かる。
「あ、今日は機嫌悪いな。」
まだ誰も怒っていない。
何も起きていない。
でも分かる。
「今日はその話やめとこう。」
と言う。
理由は聞かない。
大体当たるからだ。
「今それ言うと面倒になる。」
も分かる。
誰のことかは言わない。
何のことかも言わない。
でも大体当たる。
天気予報より当たる。
たぶん特殊能力だと思う。
人を見る人。
誰かが元気ない。
誰かが困っている。
誰かが一人になっている。
この人は気付く。
そして聞く。
「大丈夫?」
頼んでもいない。
相談もしていない。
でも聞く。
放っておけばいいのに聞く。
帰宅してから反省する。
「あれ余計だったかな。」
でも翌日また聞く。
学習しない。
たぶん、
おせっかいな人だ。
でも、
そういう人に助けられたことがある。
先を見る人。
この人は今を見ていない。
今月の話をしているのに、
来年の心配をしている。
来年の話をしているのに、
五年後の話をしている。
まだ始まってもいない話の、
反省会までしている。
周りは言う。
「そこまで考えなくていい。」
本人も思う。
「そこまで考えなくていい。」
でも考えている。
そして言う。
「言わなくてよかったかな。」
後で笑う。
でもまた言う。
未来が気になって仕方ないのだ。
過去を見る人。
この人は少し変わっている。
誰かが怒っている。
誰かが不機嫌だ。
誰かが失敗した。
そんな時、
今を見ない。
過去を見る。
「何かあったのかな。」
と言う。
周りは今の話をしている。
この人だけ、
そこに来るまでの話をしている。
本人も分かっている。
聞いても答えが出るとは限らない。
それでも気になる。
たぶん、
人にはそれぞれ、
ここまで生きてきた理由があると思っているのだ。
何も見ていない人。
この人は強い。
空気を見ない。
人を見ない。
未来も見ない。
昼飯だけ見ている。
事務所の空気は重かった。
誰も笑わない。
誰も余計なことを言わない。
所長も課長も難しい顔をしている。
たぶん誰かが怒られた後だった。
そんな時だった。
一人が事務所へ入って来た。
「あれ?」
みんなが見る。
「あれ?」
もう一回言った。
「俺、今日休みじゃなかった?」
静まり返る事務所。
誰かが言う。
「出勤です。」
「あ、そうか。」
本人は席に座った。
それだけだった。
でも、
誰かが吹き出した。
気付けば、
みんな笑っていた。
さっきまでの重たい空気が、
どこかへ消えていた。
本人は空気を変えたつもりはない。
むしろ後で聞いた。
「なんであの時みんな笑ってたの?」
誰も説明できなかった。
⸻
書きながら思った。
これは五人の話じゃないのかもしれない。
私も、
空気を見る日がある。
人を見る日もある。
先を見過ぎる日もある。
過去を振り返る日もある。
何も見ていない日もある。
たぶん、
あなたもそうだと思う。
だからこれは、
五人の話ではなく、
一人の話なのかもしれない。
⸻
ただ、
人生を振り返ると、
息苦しい場所で助けられた記憶の近くには、
不思議とこういう人がいた。
空気を見る人。
人を見る人。
先を見る人。
過去を見る人。
何も見ていない人。
でも共通していた。
空気に合わせる人ではなく、
空気を少し壊してくれる人だった。
だから私は、
そんな人たちを勝手に
空気清浄機みたいな人
と呼んでいる。
なお、本記事は特定の個人や団体を指すものではありません。
また、家族や関係者を含め、誰かを攻撃したり誹謗中傷する目的で書いたものでもありません。
人それぞれに事情や立場があり、見えない部分もあります。
誰かを傷つけるためではなく、自分自身の経験や感じたことを記録として残しています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
こうした何気ない一日を、
これからも記録として残していきます。
もし気に入っていただけたら、
👣足あとを残していただけると励みになります。
歩きながら、
少しずつ繋がっていった記録です。
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